JAZZBILLY
ROCK’A SWING PERFORMANCE 2024
2024年8月4日(日) 渋谷近未来会館
2024年8月4日、渋谷近未来会館で開催された音楽集団、JAZZBILLYのライブを観た。JAZZBILLYの音楽の特徴であるロックとジャズを融合した「ロッカ・スゥイング」に立ち返った演奏が目立っていたのだが、曲によっては3管のブラスセクションが加わっており、オリジナルの13管から3管へとリアレンジされた曲も数多く演奏されて、新たな魅力も見えてきた。原点回帰的な要素と新機軸とが絶妙に融合した密度の濃いステージとなったのだ。
「JAZZBILLYのテーマ」に乗って、メンバーが登場すると、会場内から歓声とハンドクラッブが起こった。ステージのセンターに立っているのはJAZZBILLYを率いる元MAGICの上澤津孝(Vo)。上手には三浦理(Key)、石井洋介(Gt)、幡宮航太(Ag・Per・Key・Choなど)、下手には奥野翔太(B)、河野瞬(Dr)という6人編成だ。気心の知れた4人のメンバーに加えて、初参加の幡宮と河野がバンドに新風をもたらしていた。オープニングナンバーは軽快なカントリータッチのリズムが楽しいMAGICの「Comin’ Home」。客席からハンドクラップとかけ声が起こる中で、フレンドリーな歌声と軽快な演奏が観客を揺らしていく。ライブ会場こそが彼らのホームということだろう。さらにセカンドラインのグルーヴを備えた「センチメンタル・カーニバル」、この季節にぴったりなロマンティックなナンバー「ANGEL IN THE SUMMER」と、冒頭の3曲はMAGICのナンバーが演奏された。
「JAZZBILLYは2003年に結成したんですが、羽毛田耕士くん(トランペット奏者・作曲家・編曲家)との出会いから始まりました。10数年ぶりに彼と再会して、JAZZBILLYに協力してくれることになり、当時13管でやっていた楽曲を3管に譜面を書き直してくれました」との上澤津のMCもあった。
上澤津の紹介で、柏原康介(Tb)、佐々木大輔(Tp)、矢元美沙樹(Sa)という3名のブラスセクションが登場。JAZZBILLYのインディーズアルバム『カサブランカ・ダンディ+1』に収録されているCharのカバー曲「闘牛士」が新アレンジで披露された。スゥイングするビート、哀愁の漂うブラスサウンド、上澤津の憂いを帯びた歌声のコンビネーションが絶妙だ。石井と幡宮のアコースティックギター、奥野のウッドベースもグルーヴィー。観客もハンドクラップで参加したのは、オールディーズのテイスト漂う「美咲-RISE AGAIN-」。中森明菜への提供曲のセルフカバーである「TOKYO ROSE」では、せつない歌声と艶やかなブラスによって、陰影のある世界が出現した。ハッピーな空気が漂ったのは「最高潮の夏☆沖縄ブルー」だ。爽快感のあるグルーヴが気持ちいい。この曲ではブラスの3人は楽器ではなく、ゴールドのバルーンを振っていた。にぎやかかつコミカルな演出が楽しい。
JAZZBILLYの曲、MAGICの曲、上澤津のソロ曲、カバー曲など、多彩な選曲となっていたのだが、観客をハッピーな気分にさせる曲が目立っていて、上澤津が楽しそうに歌っている姿が印象的だ。彼の人間性が曲の魅力を際立たせていると感じる瞬間もたくさんあった。MAGICの初期の曲である「冷たくしないで」では三浦や幡宮もコーラスで参加。陽気なロカビリーソング「FATTY BETTY」では、観客とのコール&レスポンスも起こった。JAZZBILLYのアルバム収録曲であり、沢田研二のカバーでもある「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」では、エモーショナルな歌声とスリリングなホーンが全開となった。
ロカビリー、ジャズ、歌謡曲、ロックンロール、スカ、オールディーズなど、曲調は幅広いのだが、どの曲も上澤津が歌うことによって、JAZZBILLYのオリジナリティーあふれる音楽になっていた。バラード曲「Dedicated to Noma Jeane」では、観客がゆらゆらと揺れながら、いとしさのにじむ歌声に聴き入っていた。幡宮によるピアニカがノスタルジックなムードを醸し出していた。一転して、ロックなバンドサウンドが炸裂してたのは「MERRY GO ROUND」だ。上澤津がシャウトし、疾走感あふれる演奏に客席が揺れている。キーボードがヒリヒリとした空気感を生み出している。バンドの一丸となった演奏が見事だった。さらに「BABU MAGIC EYES」「コモエスタAKASAKA」とエネルギッシュかつエモーショナルなナンバーでたたみかけていく展開となった。
本編の最後の曲は「東京ストリート・ロッカー」だった。もともとは1984年に発表されたBLACK CATSの曲で、その後、MAGICがカバーし、さらにオリジナル曲の作詞・作曲・プロデュースを担当した織田哲郎フィーチャリングで、ビッグバンド編成でリアレンジされて、2024年7月に配信された経緯がある。この日はさらに3管でリアレンジされての披露となった。ロカビリー、ロックンロール、ビッグバンドのエッセンスが凝縮された曲で、JAZZBILLYにとっての新たなアンセムソングとも言えそうだ。フロアの観客も「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」とかけ声で参加。メンバー全員のソロ演奏もフィーチャー。メンバーそれぞれの音楽のバックボーンが見え隠れするソロ回しが楽しかった。この日の会場である渋谷近未来会館は、BLACK CATSの拠点でもあったロカビリーショップ、クリームソーダからそんなに遠くない。30年間という時間の流れをストリートによって繋いでいくようなイメージも浮かんできた。これは彼らのルーツにして最新の曲でもあるかもしれない。大きな歓声と拍手の中で本編終了。
アンコールでは、織田哲郎の「Let The Good Times Roll」のカバーも披露された。この曲もこの日のために3管用にリアレンジされていた。“人を集わせる魅力”を備えた温かみのある上澤津の歌声が、この曲の世界観にぴったりだ。ヒューマンなロックンロールに大きな拍手が起こった。さらにMAGICの人気曲である「さらば青春の光」「自転車」なども披露された。観客もハンドクラップで参加して、濃密な一体感と熱気とがあふれる空間が出現した。
「12月14日、渋谷でまた会いましょう」という次回のライブを告知する上澤津のMCに続いて、アンコールの最後の曲として、上澤津のソロ曲「アンサーソング」が演奏された。石井のアコースティックギターのアルペジオで始まるカントリーテイストの漂う曲だ。ノスタルジックなトーンもあるのだが、これからも音楽を届けていくのだという意思を表明する曲でもあるだろう。<君に会いにいくよ>というフレーズが、過去ではなく、未来への予告のようにも響いてきたからだ。
JAZZBILLYの本来の音楽性を大切にしながらも、最新の今の息吹が吹き込まれた歌と演奏に胸が熱くなった。上澤津、三浦、石井、奥野というお馴染みのメンバーに加えて、新たなメンバー、3人のブラスセクションが加わった構成でのライブ。JAZZBILLYの核にある音楽性を大切にしながらも、フットワークの軽さや機動力も備えている。この日、彼らは新生JAZZBILLYの第一歩を刻んだところだろう。次なる未来はすぐ目の前にある。
文/長谷川 誠
写真/富川真一
配信リリース決定!
JAZZBILLY「Rock’a Beat Days」
9月7日(土)~配信開始
【配信楽曲】
JAZZBILLYのテーマ
Stand Up Boy 2023 ~あの日の俺へ~
パステルカラーに染めてくれ
ひまわり
NINETEEN DAY’S
東京ストリートロッカー
【JAZZBILLYプロフィール】
2003年17人編成のビッグバンド ”ロッカ・スゥイング・オーケストラ” としての活動を経て、ロックンロールとJAZZのクロスオーバーなSWING BEATを武器にユニット名をJAZZBILLYに改めてクラウンレコードからメジャーデビュー。ロカビリーバンドMAGIC、ロッカ・スゥイング・オーケストラの中心人物であり現在はJAZZBIILYの主幹であるボーカルの上澤津 孝は、ロカビリーに回帰することなく、ノンジャンル、ジェンダーレス、年齢不問で多種多様なプレイヤー、パフォーマーとセッションを重ねながらJAZZBILLYを常にビルディングし続け、2023年に19年ぶりのJAZZBILLY作品「Rock’a Beat Days」をアナログ盤とカセットテープでリリース、同年7月には織田哲郎をゲストに迎えたライブを主催、翌年2024年7月にはデジタルシングル、コンセプトCD限定Dub Mixアナログ盤のリリースに加え、8月には渋谷近未来会館でのワンマンライブを開催するなど、毎年キャリアハイを更新し続ける唯一無二の ”ロッカ・スゥイング” を体現する音楽集団である。
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